劇場公開日 2024年1月5日

レザボア・ドッグスのレビュー・感想・評価

全161件中、1~20件目を表示

4.5四半世紀を経た今だからこそ見直したくなる傑作

2017年11月22日
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鑑賞方法:DVD/BD

この衝撃作の誕生から早くも25年が経つ。冒頭、”like a virgin”について本筋とは全く異なる持論が展開されるが、まさにこの瞬間、タランティーノの作風を決定づける「脱線」要素が芽を吹いたと言っていいだろう。今更ながら映画を再見すると、最初のダイナーシーンが10分続き、その後も約10分刻みで展開が押し寄せる、極めて計算された構成となっていることに気づく。タランティーノをして「この脚本だけは売りたくない。自分で監督したい」と強く願わせ、結果的に「10代後半から20代後半まで何も良いことがなかった」という彼の人生に、その代償を還元するかのように数々のチャンスとラッキーとサクセスをもたらした本作。おそらくはハーベイ・カイテルが脚本と出会い「一緒にやろう」と声をかけた時、本作をめぐって最高の俳優陣が顔を合わせた時に、成功は約束されたのだ。舞台裏のエピソードも含めて全ての細部を堪能すべき一本。

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牛津厚信

4.0めっちゃバイオレンス

2024年4月29日
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鑑賞方法:映画館

怖い

興奮

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じきょう

4.0何といってもマイケルマドセン

2024年4月26日
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北枕寝二

4.0屯する腹をすかせた野犬たち

2024年3月30日
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鑑賞方法:DVD/BD、VOD

誰もが知ってる映画変態マニア、クエンティン・タランティーノの、監督脚本出演デビュー作。

【ストーリー】
ロサンゼルスを拠点とするマフィアのボス・ジョーの元に、息子エディと選りすぐりの6名の悪党たちが宝石強盗チームとして集められた。
彼らは互いをホワイト、オレンジ、ブロンド、ピンク、ブルー、ブラウンと色分けした偽名をつかい、互いの過去を詮索するなと命じられる。
周到な用意がなされた犯罪計画は、だが初手からトラブルにみまわれ、その後のミスも重なって完全に破綻してしまう。
ブラウンが頭を撃たれて死に、オレンジが腹部に弾を受けるという最悪の状態におちいり、リーダー格のホワイトは市民から車を奪っての逃走を余儀なくされる。
どうにかたどり着いた倉庫でも状況は暗澹たるもので、悪党たちの口論と仲間割れがくり返される。

暴力映画ならこの人、クエンティン・タランティーノのデビューにして出世作。
のっけからベラベラベラベラ無意味なこと喋りまくるタランティーノ本人からはじまる、その後の作品群を思い起こさせるオープニング。
さあ計画の始まりだ、と思わせて次のシーンですでに失敗してからの逃走、メイン舞台の倉庫へ。
そこから中間の場面や彼らの過去がフラッシュバックし、何故こうなったのか、そもそも男たちはどのような人物だったのかが倒叙的に語られます。
多用されるフラッシュバックの方が物語の本筋というほど長い独特の構成は、その後あちこちで見かけるようになり、近年では進撃の巨人でも使われた手法ですね。
銃を向けあう「メキシカン・スタンドオフ」という映画用語をメジャーにした作品でもあります。
犯罪映画なのにストーリーよりも存在感に重きをおいたキャラクター主導の作劇は、タランティーノ節というしかないスタイル。
場面の撮り方もスタイリッシュかつ暴力的で、VHS版のパッケージには「この映画、気に入ったぜ!」とあの深作欣二からの推薦の言葉もありました。
ヤクザ映画の大ファンだったタランティーノ監督、深作欣二と出会ったその夜に2人で日本酒三升空けたとか。
さすがバイオレンスの巨匠同士、命がけで飲んでます。

格好いいシーン続出、生々しい暴力が縦横に行使される、バイオレンス映画の傑作です。

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かせさん

4.5爽快で奥深き味わいの一品!

2024年3月16日
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鑑賞方法:映画館

楽しい

興奮

2024年映画館鑑賞9作目。
33年ぶりのリバイバル上映を観てきた。

この映画の凄さはやっぱり、スジですね、脚本。
特殊な撮影技術も、編集技術も何も使っていない。ただ、時系列が遡ったり戻ったりの場面展開とそれを入れ込むタイミングが絶妙。脚本のアイデアが見事。

およそこれから強盗に行くとは思えない感じで「Little Green Bag」が流れてスーツの野郎どもが歩いていくスタイリッシュなシーンから、いきなり血まみれでのたうち回るオレンジと励ますホワイトのシーンに切り替わるこの落差。もうこれを観た段階で、こりゃ凄い映画かもしらんぞ、となった。

そこからの展開は、上で書いたとおり。色で呼び合う素性の知らない一匹狼どもの過去がうっすらと明かされる。この過去が実にあっさり必要最小限な描き方。主要人物の劇中の行動の背景や性格がわかる最小限の範囲だけ。これが小気味よい映画のテンポを崩さない。うーん凄い・・

ブロンドの耳切前のダンスは狂気と共に色気を感じる。
色気と言えば、瀕死のオレンジが血糊の海の上でぬらぬら蠢くのも何故か色気を感じる。監督はこの狂気の中の男の色気を映像に収めることを狙っていたと思う。

しかし、最後のトライアングルで対峙した3人が一斉射撃でぶっ倒れるのは、オイオイ、そんな訳ないだろ!と心の中で笑ってしまった。コントかよ!

スタイリッシュさと間抜けさ。狂気と色気。情けなさと可笑しさ。そんなものが一皿の上に盛られた、爽快で奥深い味わいの一品。おいしく頂きました。

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TS

4.0何度見ても

2024年3月16日
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何度目かわからないが、釘付けになる作品は名作と言えるのだろう!バイオレンスの傑作です。個人的にはスティーヴ.ブシェイミがアルマゲドンなどで印象に残ってます。

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まさ

4.0忘れていた名作

2024年3月11日
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笑える

怖い

興奮

先日、NHKの『映画音楽はすばらしい!』を見ていたら安田顕さんが
「この映画のサントラは何度も聴いていました」
と言っていてすっかり内容を忘れていたことに気がつきやっと見ました
全くほとんどすっかり忘れてる、覚えているのはオープニングのスローモーションだけだった
ぺちゃくちゃとお喋りが多いので昔見た時はあまりだったのかもしれませんね
今見ると結構面白い、たわいもない話ってこんな感じなんだろうな
しかしこの台詞、聞き逃してはいけないのだ
登場人物の背景が徐々にあらわになってくる
コレは映画というよりも舞台に近い
何なら誰もいない倉庫のシーンから始まっても面白そうだけどやっぱり最初のレストランからのスローモーションはどうしても見たくなるのでもうカットする場所はどこにもなさそうだ
何と言っても黒のスーツがカッコいい
『ブルースブラザース』でレイバンのサングラスに憧れましたがこの映画で黒のスーツが流行り出したのかも
あの映画やこの映画、多くの作品が頭をよぎります
タランティーノは面白い!

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カルヴェロ

3.0カイテル特集

2024年3月9日
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泣ける

笑える

パート2。あのハウリングがやっぱり出た、ティムロスとの絡みがちょっと男泣き。ロスの小話練習シーンも、彼の役作りを見ているようで仲々凄い。しっかしアメリカンジョークってどこが笑えるのかね?
残虐シーンにポップミュージックをかけるのはここから、今回も仲々の選曲だった。ただダイアローグだけでは保たない、ある程度のストーリー、チャプター仕立てを追加して「パルプフィクション」に繫がったんだろう。製作にモンテヘルマンの名を見つけびっくり。

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トミー

4.5チープなのにスタイリッシュ!

2024年3月3日
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セットやロケに莫大なお金がかかりそうな、実際の強盗場面や派手な銃撃戦は描かない。けれど、逃げる途中で撃たれたオレンジを早々に登場させることで、ストーリーとしての緊張感を持たせる。それゆえに、倉庫の中のシーンが長くても全くダレない。
つくづく、予算をかけなくても、アイデアと工夫で素晴らしい映画がつくれるんだなと実感。
この脚本を考えた所からして、タランティーノってやっぱりすごい。この前パルプフィクションを観るまで食わず嫌いしていて申し訳なかったと改めて思った。
冒頭のわちゃわちゃした食事シーンから、リトル・グリーン・バッグが流れてタイトルが出るまでの流れるようなカッコよさと、直後にブラックアウトしてから、いきなり急展開に入る緩急のバランスなど、ホントによくできている。
そして、出てくる男たちみんな「吹き溜まりの犬たち」なのだが、その中に「ほんのちょっとだけコイツいい所もあるんだよね…」というのを見せつつ、「でもやっぱり、最後はどうしようもない結果になっちゃうよねぇ」という救いのなさがブレてない。
かけている予算も男たちの生き方もチープ。なのに、映画として、とてもスタイリッシュにまとめられている傑作でした。

ホワイト、ドンマイ…。

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sow_miya

2.5言われるほど楽しめなかったなあ

2024年2月18日
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単純

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たつじん

1.0脚本は面白い

2024年2月15日
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どうでも良い会話に他のメンバーとの関係性とその変化が垣間見えるのはいつも通りのタランティーノ。これが人気の一因らしい。

最初の円卓でカメラがわりと長回しでぐるぐる回って会話撮った後、音楽とタイトルが出る画面の何がいいのか?と思うけどね。こーいう演出に歓喜する人が多いことはわかった。

音楽で感情的な高揚を演出するやり方は幼稚に見えるので基本反対。しょーもない。

男達の裏切り、という発想だけで映画を撮っている感じが否めず、感動が無いし、もっとマイナーな俳優達を起用しても良かったと思う。ティム・ロスも同時期に『ユリシーズの瞳』に出演していたカイテルも彼等である必要があるのか疑問。

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ジャパニーズ先住民

5.0最高!

2024年2月11日
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面白かった。

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そうたん

3.5心地よい緊迫感

2024年2月10日
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鑑賞方法:映画館

冒頭の長話。くだらない話なのだが、始まりから終わりまで緊張感がある。この緊張感は、映画の終わりまで途切れることがない。

個性的で格好良い登場人物達による会話劇。それが一気に畳み掛けるように集結していくラスト、命懸けで自分の矜持を貫き通す男達。

決して特別な中身が有る訳では無いが、彼等の姿には爽快を通り越して快感すら覚える。

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komasa

4.5改めて傑作

2024年2月9日
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鑑賞方法:映画館

採点4.6
レザボアのリマスター上映、昨年末の上映アナウンスからずっと楽しみにしてました。
何度か見てますがスクリーンでは初めてなんです、どうしたってワクワクするでしょう。

さて、誰もが知るタランティーノ初監督作品。
先に脚本を手がけた「トゥルー・ロマンス」や「ナチュラルボーンキラーズ」での受難。
そしてもう待ちきれないと、友達をキャストに起用して自主制作しようとしていた所に舞い込んだ奇跡的な流れ。
その後プロデューサーとして長い付き合いとなるローレンスベンダーとの出会い。ラブコールを送ったハーヴェイカイテルの快諾と惜しみない協力。彼の特徴となる長回しに反対が多い中背中を押したテリーギリアム。
こんな出会いの連続で産まれた作品なんですよね。
まず冒頭のマドンナの件。こんなどうでも良いような喋りの長回しは見たことが無く、最初から釘付けでした。
そこからの「Little green bag」の入れ方とか凄いですね。今でも鳥肌が立つようなオープニングです。
物語のほとんどを倉庫で展開させ、バックボーンや犯行時の様子を前後に散らせた斬新な構成。
ハーヴェイカイテルをはじめ、男臭いキャスト陣も見所の一つです。
また「パルプ」や昨年公開されたドキュメンタリー「映画に愛された男」を観た後だと、小ネタや裏側が分かり更に面白くなるんですよね。
あと何と言ってもリマスター版はきれいでしたね。
それと音響も良くなってました。
これを劇場で観れて本当に良かったです。
それにしても、これがデビュー作ってすごいですよね。
そして残念ではありますが、次回作にして引退作となる「ムービークリティック」もとても楽しみです。
改めて、傑作でした。

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白波

4.5裏切りの犬

2024年2月7日
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興奮

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sankou

5.0何度観ても色褪せない宝石強盗

2024年2月7日
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鑑賞方法:映画館

チップとニックネームに文句を言いながらも、一番まともで冷静でかっこいいMr.ピンクことスティーヴ・ブシェミ!

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ももじろう

3.0スイカと天ぷら

2024年2月4日
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映画はひたすら単純明快なエンタメを求めてしまう私にとって、タランティーノ作品はあまり食い合わせがよくないらしく、大変評判のいい三作、パルプ・フィクション、キルビル、イングロリアスバスターズをそれぞれ鑑賞したものの、ああ、そうなのね、ぐらいの感想しか出てこなかった。

ならばと思い、原点に戻って監督処女作となるレザボア・ドッグス、英語の読み方的にはリザーバー・ドッグスになる気がするなーとか思いつつもまあともかく鑑賞。

宝石商の店に強盗に入るために、ロス裏業界の大物ジョーは6人の腕利きを集める。それぞれの腕利きたちは万一逮捕された時のために身分をお互いに把握しないようホワイト、ブルー、オレンジ、ブロンド、ブラウン、ピンクと色の名前で呼ばれる。

作戦決行の当日、店を襲撃した6人だったが、待ち構えていた警官に取り囲まれ、そこで突然キレて発砲しまくったブロンドと呼ばれる男のせいで激しい銃撃戦に。
命からがら逃げてきたホワイト、オレンジの二人は、待ち合わせ場所の倉庫に向かう。
オレンジは逃亡の際に腹を撃たれて重傷、ホワイトがオレンジを励ましつつ車を倉庫に向かわせる。

倉庫に着いて程なくすると、ピンクが一人で戻ってくる。ピンクはひどく興奮し、仲間の中に裏切り者がいると言い出す。でないと説明できないほど警察の到着が早かったと。
彼らは倉庫で仲間を待ちつつ、誰が裏切者かを話し始める。

タランティーノらしく人がバサバサと殺されていくシーンがあるわけではなく、会話の中で激しい銃撃戦があったこと、仲間の何人かは殺されていることなどが分かる。でもいつもよりは血の量は控えめ。時系列を相前後させてそれぞれのキーとなる人物に起こった出来事を振り返りつつ、メインの話の流れに集結させていくのは、伏線回収ではなく今の状況を過去を手繰り寄せて見せていく手法を取っていく。

正直、やっぱりスッキリする感じでも高揚感を感じるでもない結末はあまり得意ではない。けどその後の映画に与えた影響をそこかしこに感じつつ、この監督でなければこの映画は撮れない唯一無二感はしっかり感じる。

きっと好きな人は大好き。そういう映画。

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ハルクマール

5.0低予算でやれることを全てやり切った。

2024年2月1日
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楽しい

怖い

この映画のすごい所は、同じ所(廃工場)でまるでコント劇の様に繰り広げる展開は、B級映画ならではだけど、ここまでの面白さは、観たことない。いや、とっくに面白いと言う枠を超えている。まだ無名で一般人上がりの監督だったタランティーノがデビュー作でこの快挙はすごい。

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エイデンノミクス

5.0ここから新たな映画史は始まった! 1992年のハーヴェイ・カイテルをはしごする、その1

2024年1月31日
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鑑賞方法:映画館

おおお、新宿ピカデリーが満席じゃないか!!!
公開して1カ月くらい経つリヴァイヴァル上映なのに、ちょっとこれ、凄くない???

客席をざっと見ると、7割くらいは若者たちといった印象。
タランティーノが「バリバリ現役」の人気監督であることを痛感する。
きけば、劇場公開は30年ぶりらしい。
そりゃ、観ときたいよね、大画面で。

すでに暗記するくらい観直していて、DVDも持っている映画に敢えて足を運んだのは、単に大スクリーンで観たかったというだけではない。
ちょうど新宿のシネマートでは、アベル・フェラーラの『バッド・ルーテナント』も現在公開中で、この二作、実は「どちらもハーヴェイ・カイテルが主演」で、「どちらも1992年の映画」なのだ。
スコセッシとの共同作業で、初期の代表作に立て続けに出演したあと、『地獄の黙示録』降板劇でハリウッドを追われ、イギリスでリドリー・スコットの映画に出ながら捲土重来を期していたカイテルが、『テルマ・アンド・ルイーズ』(これももうすぐリヴァイヴァル上映がかかるらしいけど)と『バグジー』で復活ののろしをあげたのが、1991年。
1992年は、まさにハーヴェイ・カイテルにとって「勝負の年」だった。

この2本の映画を「一日ではしごする」。
自分でいうのもなんだが「天才的なアイディア」ではないだろうか??
我ながら素晴らしい企画力だ。さすがは俺!
というわけでさっそく行ってきました。
そしたら、まさかの「若者で満席」という状況に出くわして驚倒したという次第。
日本も、ほんとまだ捨てたもんじゃないね!!

― ― ―

パンフレットに書かれている、「すべてはこの映画から始まった」という惹句は、必ずしも誇張ではない。
本当に『レザボア・ドッグス』は、映画史上の分水嶺になる映画なのだ。
『レザボア・ドッグス』以前。
『レザボア・ドッグス』以降。
間違いなく、この映画の登場によって、映画の在り方は大きく変わったし、監督の在り方も大きく変わった。

僕は、タランティーノの登場とは、ハリウッドに遅れてやって来た「ヌーヴェル・ヴァーグ」のようなものだったと思っている。『レザボア・ドッグス』はさながら『勝手にしやがれ』のような役割を果たしたというべきか。
タランティーノの立ち位置というのは、実はトリュフォーやゴダールのそれとよく似ている。
旧来の映画産業のシステム内で叩き上げてきたわけではなく、「シネフィル」「批評家」的なスタンスから、いきなり現場に入ってきた人物であること。
(ゴダールたちにとっての「カイエ・デュ・シネマ」が、タランティーノにとっての「マンハッタン・ビーチ・ビデオ・アーカイブ」だった。)
最初は「脚本」の持ち込みからキャリアをスタートさせ、旧カルチャー内のパトロンと伝手をなんとか見出して監督業に乗り出していること。
従来的な「名画」や「文芸作」だけではなく、当時は取るにたらないと考えられていたB級の娯楽映画に積極的な価値を見出し、それらのエンタメ作への「愛」を原動力に映画に取り組んだこと(ヌーヴェル・ヴァーグの監督たちは、サミュエル・フラーのようなアメリカの40~50年代のフィルム・ノワールと、ヒッチコックのサスペンス映画と、ダグラス・サークのようなメロドラマを高く評価した。タランティーノのB級映画愛好は、これとパラレルな部分がある)。

タランティーノの場合、ヌーヴェル・ヴァーグの監督たちといちばん異なっていたのは、実作においても、「娯楽映画」の枠から絶対に外れようとしなかったことだ。
彼は、自らのジャンル映画愛をとにかく前面に押し出して、それらのB級娯楽映画のパロディともいえるジャンル映画を撮り続けて来た。
頭でっかちにならず、常に「観客を喜ばせるエンタメ作」を指向してきた。
クライム・フィクション。ブラックスプロイテーション。マカロニ・ウエスタンと任侠映画。ホラー。戦争映画。ミステリー。ハリウッド内幕もの。
彼の映画は、常に愛するジャンル映画群を「リファイン」したものであり、そこにはバッド・テイストや過剰さの引き起こす笑いが散りばめられている。一方で、結果として生み出された作品は、なんだかんだいって常に「クオリティが高い」。
「頭のべらぼうに良いシネフィルが、全力でくだらないB級映画を撮る」というスタンスそれ自体が、おそらくならタランティーノの発明だったといっていいだろう。
「めちゃくちゃ面白くて完成度の高いB級のジャンル映画」というおそろしく歪んだ代物は、タランティーノ以降生み出された、新たな映画的アプローチだった。
(パンフレットに書かれている、「何度も再生できるヴィデオをメディアとして映画的研鑽を積んだ結果、映画の細部にこだわるようになった最初の世代」という視点もとても重要な指摘だと思う。)

やがて、完成度の高いトリッキーな脚本によって、ジャンル映画をポリッシュしたようなウェルメイドな作品群が、インディー・シーンを中心として続々と製作され始める。
こうした「斬新な映像」に「練りに練った巧緻な脚本(およびサプライズド・エンディング)」を絡めた作品群は、腕ぶす新人監督たちの格好の実験場となり、この流れは世界の隅々にまで広がってゆく。
一方で、タランティーノ以前から「タランティーノ好み」の映画を撮っていた深作欣二や北野武、ウォン・カーウァイらに対しては、積極的にタランティーノの側から「リスペクト」を示し、全米公開の労をとったりもしている。
自作では新たな映画観を呈示し、更新しつづけながらも、新人を積極的に引き立て、過去作品を掘り起こし、「タランティーノ好み」の世界観を拡大し続ける。
彼のやっていることは、江戸時代でいえばまさに「本阿弥光悦」に近いような「実作も超一流の目利き」としての「価値観の再創造」を促してゆく仕事であり、あるいは、モダンホラーにおける「スティーヴン・キング」に匹敵する役回りを示してきたともいえる(キングは「帯推薦」で新人を庇護し、評論において過去作を激賞することで、自らの「傘」の下に多くのホラー作家を従えてきた人だ)。
タランティーノは、1970年代の(当時、評論筋からはバカにされきっていた)大衆向け娯楽映画の再評価と実作への援用によって、「趣味性」と「偏愛」が立派に「作家性」たりうることを証明し、1990年代以降の「映画の在り方を根底から変えて」みせたのだ。

― ― ―

エルモア・レナードの香りが濃厚な1990年代の初期3作と、より趣味性とドギツいアホネタ度が高まった『キル・ビル』以降(2000年代以降)の作品群には、テイストにそれなりの懸隔があって、個人的には、やはりタランティーノの最高傑作といえば『レザボア・ドッグス』と『パルプ・フィクション』にとどめを刺すと思っている。

アメリカの映画史上、強盗団を主人公にしたフィルム・ノワールは、それこそ星の数ほど作られてきた。しかし、後にも先にも『レザボア・ドッグス』ほどに面白い映画はないし、作られて30年以上が経った今観ても、まったく古びていない。

考えてみると、話のネタ自体は、決して斬新というわけでもない。
強盗団の作戦失敗。疑心暗鬼による自壊劇。
潜入捜査官と犯罪者の駆け引きと友情。
これらの作品内イベントには、多くの人々が指摘する旧作の前例がある。

やはり、今回久しぶりに観直して痛感したのは、なんといってもこの映画は「リズム」が良い。画面の切り替え、役者の演技のメリハリ、音楽のインサート、すべての「間合い」が、絶妙にスタイリッシュで素晴らしいのだ。

それから、リアリティと嘘くささのバランスが絶妙だ。
いかにもそのへんの「輩」がほざいていそうなセリフと、妙にインテリくさい「ライク・ア・ヴァージン論」や「チップ論」の対比。
各キャラの言動に見られる現実感と、フィルム・ノワールに由来する「いかにもな型どおりのギャングしぐさ」の按分。
生っぽいのに、作り物くさい。そこがいい。

もうひとつ、「笑い」と「残酷さ」の兼ね合いが絶妙だ。
たぶん、元ネタとされる『現金に身体を張れ』や『友は風の彼方に』とは一番異なる、タランティーノ独自の「核心」ともいえる部分こそが、この「笑い」の感覚なのではないか。
90年代以降、われわれはこのタランティーノの「笑い」の嗅覚に憧れ、タランティーノが面白いと思うことを自分も面白いと思えるような思考を鍛えることを望み、タランティーノ好みの映画観に寄り添って映画を観ることを強いて来た部分が、間違いなくある。
とくに僕のように、『キネマ旬報』(敵視していたw)や『スクリーン』(バカにしていたw)ではなく、『映画秘宝』をもっぱら愛好してきたような映画ファンの場合、タランティーノの「笑い」への憧れは滅法強かった。
ファックの連呼に笑い、マドセンのダンスに笑い、耳そぎに笑う。
真顔で色名の綽名をつけるジョーに笑い、結局ほとんど出てこないブルーに笑う。
自分を撃った素人のババアを条件反射で容赦なく撃つティム・ロスに笑い、
友と信じた男の裏切りに男梅のように男泣きする男カイテルに笑う。

タランティーノが面白がっている「細部」に共鳴できるか、自分もそれを面白がれるくらいの「マニア性」や「B級映画愛」があるかをはかられている、タランティーノ体験には、なんとなくそんな「試されている」ようなところがある。肩を組んできたタランティーノに「どうだい、イカすだろ??」とささやきかけられているような。

で、「リズム」が良くて、リアリティ・バランスが良くて、「笑い」と「残酷」さの按分が良くて、というのは結局のところ、タランティーノの「センス」が良い、という話に尽きるわけで、誰にでも似たような話は作れても、誰ひとりとして同じ出来の映画を真似することはできないという結論になる。
実際、どこか初々しい生硬さがあちこちに残っている『レザボア・ドッグス』のほうが、作品の純度の高さは『パルプ・フィクション』より上な気もするし、タランティーノ自身、その後も『レザボア・ドッグス』ほどに「鮮烈」な印象を与える映画は作れていない。
タランティーノにとっても、『レザボア・ドッグス』は唯一無二の作品なのだ。

この映画の特別さを語る上では、本作を足掛かりに「さらなる高み」を目指していた(ハーヴェイ・カイテルも含めた)出演俳優たちのギラギラした大熱演ぶりも、大きな役割を果たしていると思う(とくにスティーヴ・ブシェミとマイケル・マドセンはほんとに良い)。一方で、ブルー役に敬愛する元犯罪者エディ・バンカーを出演させるあたり、やっていることがゴダールと本当によく似ている。

ハーヴェイ・カイテルは、スコセッシ仕込みということもあるのか、演技プランや台詞の繰り返しを多用するクセにデ・ニーロの影を感じないでもないが、スターらしい風格で映画をぐっと引き締めている。彼がいるといないとではまるで違う映画になっていただろう。特にラストシーンは、実は意外に説得力を持たせるのが難しい展開だと思うのだが、カイテルの力業で無理やり押し切った感があって、さすがとしかいいようがない。

個人的には、ガソリンの充満した倉庫で撃ち合いなどしでかしたら、そんなことではすまないだろう、と思うところもあるし、タランティーノ演じるブラウンの死は、もう少しきっちり描いたほうが良かったのではとも思う(初見時、僕はこれって『そして誰もいなくなった』ネタか!と思って、てっきり最後に生き残ったタランティーノがダイヤをかっさらっていくオチかとばかり思って観ていたので、ラストで微妙にがっかりした記憶があるw)

でもまあ、今回観直してみて、やっぱり思いました。
これを超える映画ってのは、そうそう今後も出てこないし、
自分の青春時代にこの映画に出逢えてよかったなと。

みなさん、まだ劇場でやってる間にぜひ大スクリーンでご堪能ください!
あと、パンフレットはマストバイ。この映画をしゃぶりつくすために必要な解説とトリビアのすべてがぎっしり詰まった、超お手頃ガイドとなっていて、マジで素晴らしいです。

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じゃい

4.5【全く色褪せない興奮再び‼︎】

2024年1月28日
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学生時代に観て以来の鑑賞。まずポスターがカッコいい。ワクワクする心地良いテンポ、卑しい内容なのに何故かスタイリッシュな会話の遣り取り、George Baker「Little Green Bag」、Blue Swede「Hooked On A Feeling」、Joe Tex「I Gotcha」他、今もCM等々でお馴染みの時代を象徴する音楽選曲(Madonna「Like A Virgin」はタランティーノ演じるMr. Brownの独り善がりの講釈のみ、冒頭のこのdinerで円卓を囲んでの与太話シーンは秀逸🤣)と、あっという間の上映時間99分。

本作に影響を受けたり、オマージュした作品が幾つあるのだろうと改めて思わせてくれる。気を衒ったようで計算され尽くした観る者を惹きつける脚本と編集、狂気とクールが錯綜する予測不能のスリリングな展開と人物設定の妙は、全く以て色褪せるどころか四半世紀を経ても新鮮でさえある。マカロニ・ウェスタンのような古典的雰囲気漂うラストシーンも知ってて観ても見事な終幕。

ここ最近の名作傑作デジタルリマスター版リバイバル公開の潮流に感謝!この機会がなければもう観てなかっただろう、今後とも是非お願いしたい‼︎

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Chang Koh